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NEXT LEADERS

メルカリの始まりはスニーカーとパソコン?「好き」が仕事に繋がった理由

「人と同じことをやっても勝てない」——進学校での挫折から始まり、中学時代に夢中になったスニーカー、パソコン、サッカーが、やがてメルカリの創業や鹿島アントラーズの経営へとつながっていった。株式会社メルカリ取締役会長で株式会社鹿島アントラーズFC 代表取締役社長の小泉文明氏が、次世代のリーダーとなる中高生たちに向けて、自身の原体験と「好きなこと」の力について語ったキャリアガイダンスの模様をお届けします。

メルカリ取締役会長小泉氏が中高生に伝えたいこと

今日はネクストリーダーということで、前半は主に二つのパートに分かれています。一つ目が、私自身が皆さんぐらいの年代の頃にどういう思いでいたか、それが今の仕事にどう繋がっているかということ。二つ目は、皆さんからいただいたご質問に可能な限りお答えできればなと思っています。

今、メルカリを含めてプラス2社を経営していますけれども、私はもともと小さい町で生まれまして、最初は証券会社に入りました。その後、ミクシィという——皆さんのお父さんお母さんであればほぼ全員使っていたようなSNSですね。TwitterとかInstagramの一番最初の、日本で流行ったサービスの会社で、20代の頃に経営をしていました。その後、仲間と一緒に作ったのがメルカリ、そして鹿島アントラーズです。今日は少しその全体のお話ができればなと思っています。

進学校で味わった挫折――「人と同じことをやっても勝てない」

中学校時代の話をしたいんですが、まず当時の僕のメンタルの状況からお伝えすると、中学に入った瞬間にガツンと落ちました。僕は非常に小さい町で生まれまして、小学校の頃は自分は勉強ができるほうだと思っていたんです。それで中学受験をして、中高一貫のいわゆる進学校に入るんですけれども、最初のテストで80人中63位。進学校だったので毎日のようにテストがあって、その成績順位が廊下に張り出されるんですね。成績順でクラスも替えられる。すべてを競争させられている中で、自分はいつも一番下のほうにいるわけです。

このとき思ったのは、「勉強では勝てないな」ということでした。同じことをやっても勝てない。自分はそんなに能力が高くないんだなということを、中学1年生の一番最初に突きつけられたんです。

ただ、中高一貫校なので高校卒業まで6年間ある。だったら何となく自分の好きなことをして過ごそうと思いました。この「好きなことをして過ごそう」という判断が、実は今の仕事に思いっきり影響しています。一つ目が、洋楽やファッションといった文化的なもの。僕の頃はインターネットもなかったので、本屋に行っては音楽やファッションの雑誌をひたすら立ち読みしていました。二つ目がMacintosh、パソコンですね。これは後ほど詳しくお話しします。三つ目が部活です。僕の学校は元々高校だけだったところが初めて中学校を作った、その1期生だったんです。だから先輩がいなくて、中学3年間ずっとキャプテン。高校でも大学でもずっとやっていたんですが、このキャプテンとしての経験が、実はその後の自分にすごく影響しています。勉強では全然勝てなかったけれど、好きなことに没頭した時間が、結果的に今の自分をつくってくれた。そのことは、これからもう少し詳しくお話しできればと思います。

スニーカー、パソコン、サッカー――中学時代の「好き」が今の仕事になった

中学時代に特に印象的だったのが、中学3年生のときの出来事です。ナイキのスニーカーを「かっこいいな」と思って1万5000円で買ったんですね。そしたらこれがものすごく値上がりして、当時20何万円までいきました。エアマックスがすごく流行った時代です。それ以外にも、自分が買ったスニーカーやバッグがどんどん値段が上がっていくという経験をいくつもしました。自分が「いいな、かっこいいな」と思ったものが値上がりしていく。これが後にビジネスや、皆さんご存知のメルカリに繋がっていくんですけど、中学3年生のときのこの体験が一番の原体験ですね。

もう一つが、パソコンとの出会いです。当時のMacintoshって、七、八十万円から100万円ぐらいするような時代だったんですが、ちょうど学校のコンピュータルームに20台置いてありました。

さっきお話ししたように、数学にしろ日常のテストをやっても全然順位が上がらないんですが、パソコンについては違ったんですよ。グラフィックを作ったり、簡単なゲームを作ったりするんですが、こういうのってテストの点がつかないんです。点数はなくて、みんな純粋に楽しんでいる。自分が作ったゲームをみんなが遊んでくれたり、自分が作ったグラフィックを先生に「かっこいいね」って言ってもらえたり。テストを受けて結果を突きつけられて「つらいな」と感じるのとは全然違って、パソコンは自分が思い描いたことを形にしていける。それが純粋に楽しかったんですね。皆さん何か気づきませんか? スニーカーの体験とパソコンの体験、これが揃うと、ほぼ今のメルカリに繋がるんです。中学時代に好きだったものが、本当にそのまま今の自分に影響しているなと感じています。

そしてもう一つ。今僕は鹿島アントラーズの経営をしていますが、僕が中学1年生の頃にJリーグが始まりました。僕は山梨で育ったんですが、母親の実家が茨城にあって、父親の実家がカシマスタジアムの近くだったんです。もともと野球少年で、サッカーなんて一度も見たことがなかった。でも中学のときに初めてカシマスタジアムに連れて行ってもらって、そこでサッカーを観て、一気にファンになりました。

今振り返ると、中学時代に好きだったスニーカーを買うこと、パソコンで遊ぶこと、サッカーチームを応援すること――これが全部、今の自分の仕事に繋がっているんですね。だから皆さんも、これからどういう仕事をつくっていくかを考えると思うんですが、僕自身の経験で言えば、中学時代に好きだったことをひたすらやり続けた結果が今なんです。ひょっとしたら今皆さんが「これやりたい」「あれやりたい」と思っていること、あるいは「こういう夢がある」と感じている気持ちは、将来ものすごく大事な意味を持つかもしれない。その気持ちをぜひ大切にしてほしい。これが一つ目のメッセージです。

周囲に流された医学部志望から、自分の本当にやりたい道へ

高校生以降もいろいろあったんですけれども、僕自身は実は理系にいまして、高校2年生までは医学部に行こうと思っていました。ただそれはどちらかというと、進学校の理系にいるとみんな医学部を目指すので、何となく自分もそうしなきゃいけないのかなという感覚だったんですね。高校2年生から3年生に変わるタイミングで、いよいよ受験勉強を本格的にやらなきゃいけないとなったときに、ふと気づくんです。「あれ、俺そんなに医者になりたくないな」と。周りに流されていただけだったんですよね。

じゃあ自分が本当にやりたいことは何なのかと考えたとき、さっきのスニーカーの話に戻るんですが、自分の好きなものを買ってきて、それが値上がりしていくというビジネスの構造がすごく面白いなと思ったんです。それともう一つ、僕は中学校の頃からずっと洋楽を聴いていたので、英語だけはできたんですね。英語を使って何かビジネスをしたいなと。海外に出て行って、英語で交渉して、自分がいいと思うものを仕入れてきて売る。いわゆる貿易、トレーディングみたいなことをやりたいなと思って、高校3年生になるときに医学部をやめて、ビジネスの道に大きく舵を切りました。

ここで方向転換しなければ、おそらく今の自分はいなかったと思います。運がよければ医者になっていたかもしれないし、まったく違う職業だったかもしれない。言いたいことは、組織にいるとだんだん周りの人に流されるんですよね。僕も理系だったから何となく医者になろうと流されていた。でも大事なのは、自分が本当に何をやりたいかということなんです。僕はこのとき初めて自分でやりたいものを見つけたので、高校3年生の1年間は、それまで全然身が入らなかった勉強に必死に取り組んで、現役で商学部に合格しました。自分でビジネスを学べる場所を選んだんです。やっぱり自分の中の声、自分の思いっていうのはすごく大事にしてほしいなと思っています。

大学に入ってからは、親元を離れて東京に出てきたので、もう好きなことをとことんやりました。当時、原宿がファッションの街としてすごく盛り上がっていて、原宿に行っては自分の好きなものを買ってきて、それをインターネットで転売するということをやっていたんです。まさに今のメルカリのようなことを、当時のヤフーオークションでやっていたんですね。高校生から大学生にかけて、本当にやりたいことをやり続けたこの時期は、振り返ってみるとすごく大事だったんじゃないかなと思っています。

なので、一つ目のメッセージとしてお伝えしたいのは、皆さんの心の中にある「本当にやりたいこと」、当時の自分で言えばそれは「好きだった」ということですね。ファッションが好きだった、音楽が好きだった、サッカーが好きだった。そういう「好き」という気持ちが、実はその後の人生に大きな影響を及ぼすということです。

3人から800人へ――ミクシィの経営で学んだ「自分にしかできないこと」

もう一つ、社会人になってからの話をさせてください。僕は20代の頃に、ミクシィという会社を経営しました。皆さんのお父さんお母さんであれば、ほぼ全員使っていたようなSNSです。今のInstagramやTwitterが流行る前に、日本で最初に大きく広まったサービスですね。僕が最初に関わったときは、たった3人で事業をスタートしたんです。毎日必死に働いて、サービスを育てていって。それが30歳になる頃には、社員が800人くらいにまで増えていました。売り上げもゼロだったものが600億、700億円規模になって、本当にたくさんの仲間が社内にいる状態になったんですね。

そういう中で僕が思ったのは、どんどん優秀な人が後から後から入ってくるわけですよ。「あれ、自分がやらなくても、誰かがこの会社を経営できるな」と。それで僕は、自分にしかできないことをやろうと思って、ミクシィを辞めました。これはすごく大事なポイントだと思っていて、仕事でも何でも意思決定するときに、「自分にしかできないこと」に時間を使ってほしいんです。他の誰かがやれること、できることに自分の時間を費やすのではなく、「自分だったらこうする」「自分にしかできないこと」にチャレンジするという意識を持ってほしいなと。

なんでこう思うかというと、さっきお話しした中学校時代の経験に戻るんですね。みんなと同じテストを受けても、全然成績が出なかった。実は社会人になって最初に大企業に入ったときも全く同じで、周りのみんなと同じようにやっても全然できなかったんです。だから常に、「自分は同じことをやっても他人に勝てない」「他の人より優秀ではない」とずっと思ってきた。だからこそ、みんなと同じことをやるのではなく、自分にしかできないことをやろうと意識してきたんです。

中学生・高校生の皆さんだと、やっぱり周りの目が気になったり、テストで周りと比較されたりすることが多いと思います。でも大事なのは、自分にしかできないことを見つけること。そして、自分にしかできない方向に意思決定をしていくことなんです。大人になって社会に出ると、全く同じ環境なんてないんですよ。同じテストを受けるなんてことは一切ない。一人一人違うステージがあって、一人一人違う課題に向き合わなきゃいけない。だからこそ、「自分だったらこうしたい」「自分はこれをやりたい」という思いを持って、周りの目はあまり気にせずに、自分のやりたいことに突き進んでもらいたいなと思っています。

そんなことを思いながら、今はメルカリという会社を経営しています。社員は2000人くらいいて、55カ国から人が集まっていて、外国人の比率も30%を超えています。何が言いたいかというと、やっぱり日本発で世界に勝負できる会社を作りたいということで、また新しいチャレンジをしているところです。ミクシィで学んだ「自分にしかできないことをやる」という思いが、メルカリでの挑戦にもそのまま繋がっているんですね。

AI時代だからこそ、「自分が何をやりたいか」が問われる

最後にもう一つ、大事なことをお伝えしたいなと思います。おそらくこれから、AIやロボティクスなど、いろんな技術がどんどん出てきて、皆さんもその影響を受けることになると思います。今はスマートフォンが当たり前ですけど、多分また違うデバイスに変わっていくでしょうし、テレビやYouTubeも、また違うサービスにどんどん置き換わっていくんじゃないかなと。今ある仕事の半分、いやもっとかもしれませんが、なくなっていくと思っています。AIやロボットによって代替されていく、そういう時代がやってきます。

ただ、僕はこのテクノロジーの進化をネガティブには捉えていなくて、むしろ、みんなが本当にやりたい仕事を思う存分できる時代になるんじゃないかなと思っているんです。人間がやりたくないような仕事や非効率な作業は、どんどんAIやロボットがやってくれるようになる。そうすると、よりクリエイティブな仕事、自分が本当にやりたいことだけが残っていくはずなんですよね。個人がどんどんエンパワーされて、一人ひとりが自分らしく生きられる時代になっていく。特にAIが発展すると、自分のやりたいことをアウトプットとして表現しやすくなっている。これはすごくいい流れだと思います。

でも、ここで大事なことがあるんです。AIとかいろんなテクノロジーがどれだけ発展しても、結局その人の中に「これをやりたい」という気持ちがなければ、使いこなせないんですよ。「もっとこれを勉強したい」「こういうクリエイティブを作りたい」「こういうものがあったら世の中もっと良くなるんじゃないか」――そういう内側からの思いがあって初めて、AIは力を発揮してくれる。逆に言えば、その思いがなければ、AIを使ったところで大したことはできないんです。だからこそ、中学生・高校生の皆さんには、自分が本当に何をやりたいのか、何にチャレンジしたいのか、その気持ちをすごく大事にしてほしいなと思っています。テクノロジーはあくまで道具であって、それを動かすのは、皆さん一人ひとりの中にある「やりたい」という思いなんです。

今の「好き」が未来をつくる――未来のネクストリーダーたちへのメッセージ

僕自身の歴史を振り返ると、中学校の頃に自分が本当に一番好きだったものが、今の時代になってこういう仕事になっているんですよね。そもそも中学生の頃はインターネットすらなかったので、自分がインターネット企業の経営者になるとは思ってもいませんでしたし、まさか大ファンだったサッカーチームの社長になるなんて想像もしていなかった。よくAppleを作ったスティーブ・ジョブズが「コネクティング・ザ・ドッツ」という言葉を使っていますけど、これは人生における一つ一つの経験が、全てその後の未来につながっているという意味なんですね。だから今、中学生・高校生の皆さんが本当に好きだと思っているものが、きっとその後の人生に影響してくるんじゃないかなと思っています。

僕、こういうプレゼンテーションを過去にも何回かしているんですが、5年前に高校生向けに同じような話をしたことがあったんです。そのとき、ある高校2年生の女の子が終わった後に泣きながら来たんですね。「どうしたの?」って聞いたら、彼女もやっぱり理系で、お父さんがお医者さんで、自分も医者にならなきゃいけないと思っていたと。でも僕の話を聞いて、「私は実は宇宙をやりたいんです」って言うんですよ。「どうしても宇宙をやりたくて、今日の話を聞いて、今晩親に自分は医者じゃなくて宇宙のことをやりたいって言おうと思ってます」と。

実はその数年後に彼女から連絡がありまして、親を説得して、今は宇宙のことを勉強していますって報告してくれたんです。この話を聞いたとき、本当にうれしかったですね。皆さんもきっと、いろんな人から影響を受けると思います。親の期待だったり、先生のアドバイスだったり、周りの友達の進路だったり。でもやっぱり最後は、自分の心の中で思っていることをすごく大事にしてほしいんです。一人一人能力は違うので、他人と比較する必要もないと思っています。僕自身、他人と比較されるのが嫌で、どんどん自分にしかできないことにチャレンジしてきました。だからこそ皆さんにも、自分の個性、自分のやりたいことを大事にしてもらいたいなと思っています。